2017年9月29日金曜日

【面談報告】2017/9/6実施「経済連携協定などに関する情報公開要求」政府面談

【面談報告】2017/9/6実施「経済連携協定などに関する情報公開要求」政府面談


私たち「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会」は、2017年8月10日、河野外務大臣、茂木内閣府TPP担当大臣宛に、「経済連携協定などに関する情報公開要求」に関する要請を行いました。9月6日外務省にて、外務省経済連携課及び欧州連合経済室・内閣官房TPP対策本部と、賛同団体と共に面談し回答を得ましたので、以下報告します。

※今報告は再整理しているため、発言の順序は実際と異なります。また、面談内容の報告であり、時間の都合上議論を深めることができなかった内容も含まれます。後日、議論を深められたものについては、随時掲載いたします。



要請にかかる外務省及び内閣官房との面談報告

日時:2017年9月6日14:00~(約1時間半)
場所:外務省北庁舎6階611会議室

■政府側参加者
外務省 大河内経済連携課長及び大塚欧州連合経済室長,
内閣官房TPP対策本部 中島企画官及び春山主査

■市民側面談参加者
フォーラム平和・人権・環境、緑の党グリーンズジャパン、農民連2名、全国実行委員会3名



1.「経済連携協定などに関する情報公開要求」に関する要請について

全国実行委員会より、今回面談の経緯及び要請の概要・ポイントについて説明を行った。

<経緯>
我々は2012年以降「TPP交渉の情報公開・市民参加・透明性」を要請し、政府と対話をしてきた。TPP後の日本が係る全ての通商交渉に対しても、同様の内容を賛同団体と共に以下要請する。

<今回の要請内容>
要請全文はこちらから→ http://tpp-dialogue.blogspot.jp/2017/06/blog-post.html

①日米経済対話を含む全ての経済連携協定並びにそれに準ずる通商協定の内容及び交渉経過を所管官庁のウェッブサイトで公開すること

②上記に関する市民参加の説明会を、交渉の行われる海外を含め可能な限り各地域で開催すると共に幅広く意見聴取を行うこと

③併せて交渉内容・経過についての国会での慎重かつ丁寧な審議を保障すること



2.外務省及びTPP政府対策本部から、今回要請への回答

<外務省及びTPP政府対策本部からの書面回答ポイント>

全文データ(4P)はこちらから
→ https://drive.google.com/file/d/0B_MhgdFB8xzEMzZKdmVpOUhpZXc/view?usp=sharing

①ウェブサイト等への情報公開について
・日米経済対話の概要や関連文書を外務省のホームページに公表。
・経済連携協定は、これまで発効・署名済みの協定の内容、交渉中の協定についても、交渉経緯を含めて可能な限りの情報を掲載。
・TPPは計4000ページ以上の資料を内閣官房のホームページに掲載。
・外交交渉の経緯を開示することは、類似の交渉における我が国の手の内をさらしてしまうこと、相手側との信頼関係を損なうおそれがあること等から自ずと公開できる情報の内容や範囲に制約がある。しかし,説明責任はしっかり果たしていきたい。

②市民参加の説明会と意見聴取の実施
・TPPは大筋合意後、全国で約300回の説明会を実施。
・全国各地の地方経済産業局や、農政局、税関、ジェトロ等に相談窓口を設置。
・日EU・EPAも日本国内で説明会を順次実施、政府全体で既に60回以上説明の機会。
・RCEPは、これまでも交渉会合の機会に日本を含む各国の交渉関係者とNGO等との間で意見交換。
・適時適切な情報提供に努め、国民市民社会の御意見を丁寧に伺い、今後交渉に取り組む。

③国会での慎重審議
・TPPについては、昨年国会承認までに100時間以上にわたる審議。
・その過程において、昨年1月以降、国会議員の要望に応じ、合計約1700ページの資料を提供。

④情報提供については不断の改善に努めるつもり。


3、政府回答を受けての面談報告

①ウェブサイト等への情報公開について
市民側:TPPは4000ページ以上の資料公開というが、8000ページ以上あるはず。4000ページ資料の詳細は?

内閣官房:協定本文全てと附属書の各国共通部分は全て和訳。各国ごとの約束留保は約8,000ページ中の7,000ページを占めるが、日本に関する部分を和訳、その他はポイントのみ和訳し、国会にも提出。これまでのWTO(世界貿易機関)や日本個別の経済連携協定に倣っている。

市民側:日本に関わる部分は全て和訳済ということは理解した。
しかし、日本に直接関わりない附属書も含めて他国との比較をして初めて、日本政府の交渉スタンス、決着内容への評価が可能になる。協定本文と附属書の英文の表現が違った事例(日米交換書簡)もある。日本に直接関わりない附属書を含め、翻訳が必要なものが沢山ある

外務省経済連携課:膨大な附属書の和訳は、国会承認を受けるかどうかによる。政府としても悩ましい。

市民側:影響試算はいつ出すのか?

内閣官房:基本方針に基づきTPPと同様と考える。農水省が大綱を出し、農水省の定量的試算と内閣府の定性的要素を含むマクロ経済試算として統合する。国内対策によりどうモデルを設定するかで変わるので、試算数字は将来予想ではなく、あくまでも議論の参考だ。

市民側:通商協定ごとに影響試算・対策を策定する結果、長期戦略のないまま、次交渉でさらに譲歩、それを受けまたツギハギの対策と影響試算を策定…が続いているように見える。

市民側:交渉は交渉官だけでなく市民のものでもあり、民主主義の論理に従えば、公表が原則。相手側の発言・提案の公表は無理でも、日本側の提案は相手も分かっており、本当に差しさわりのあるもの以外は公表できるはず。大変になるのは分かるが「原則公表」は、民主主義のコストとしてやるべきだ。通商交渉は「市民のもの」だ。


<記者ブリーフィング及びその報告>
市民側:TPPでは首席交渉官会合クラスでは連日のブリーフィングがあり、内閣官房のサイトにその内容を即座にアップしていたが、その他の協定はされていない。なぜか。

外務省欧州連合経済室:公式会合については会見を実施していたが、昨年大枠合意に至らなかったので、今年はビデオ会議や交渉官の行き来など、非公式の会合を間断なく実施しており、公式記者会見のセッティングが難しかった。今後説明会等を充実させる等、改善につき検討したい。

内閣官房:TPP11は現在、11か国でいかに発効していくのか、その方策の協議であり、交渉ではない。11月APECで議論を総括すると合意しており、なんらかまとまったところではきちんと説明する。

市民側:TPP11では確かに「箱根高級事務レベル会合」、と交渉という言葉は使っていないが、報道では個別論点がでており、交渉の実質を持っている。最低でも12か国時と同様の努力をしてほしい。

<日EU・EPA>
市民側:日EU・EPAでEUは7月大枠合意即日に、交渉目標や獲得内容なども含めたファクトシートや協定本文を一定の達成点として公開。
EUは公開しており、信頼関係を損ねることにならず、公開可能なはず。

外務省欧州連合経済室:大枠合意とはいえテキストはまだ固まっていない。最終合意までに協定本文を公開する場合には、公開した後、修正が生じることによる混乱を招く可能性がある。しかし情報公開については努力の余地はある。

市民側:EU市民は情報オープンになっており、各国政府に意見を言う権利がある。一方、日本は意見があるなら「訳して読め」「日本政府の正式な公表でないのに意見を言われたら困る」という状況。交渉への、市民の意思の反映がアンフェア、圧倒的に不利だ。

市民側:EUは欧州議会の委任を受け、交渉の基本方針を決定し、公表した上で交渉。公開資料も圧倒的に日本より多い。日本の交渉経過報告は「日EU・EPAは箇条書き4項目全4行」「RCEPは箇条書き3項目4行」。交渉経過の情報に大きな落差

外務省欧州連合経済室:EUは主権国家の集合体で各国から委任を受けている。構造的に他国と違っており、公開度が高い。

市民側:それは言い訳だ。多くの国と比べて、日本の情報開示は劣っている。

外務省欧州連合経済室:情報公開を心していく。

市民側:現在のファクトシートでは、TPP時と比べても内容が読み取れない。合意まで、このままいくのか?特に酪農家は資産も大きく、今後の経営をどうすべきか、判断出来る内容になっていない。

外務省欧州連合経済室:TPPの大筋合意時と比べて交渉のまとまり度合が低く,大枠合意時点で出せる最大限のものが現在のファクトシートだった。長い協定文の中で整合性を取れるよう、精査が必要で時間が必要。しかし、まとまるまで今のファクトシートのまま,というのは不充分と考えており、より詳しいものを出すべく努力する。交渉がまとまれば、もっと詳しく出せる。

市民側:日本語も正文にするのか?

外務省欧州連合経済室:正文にするよう交渉している。

<TPP11>
内閣官房:記者ブリーフィングなどで交渉過程を情報提供しており、累計500P程度、HP掲載すみ。


②市民参加の説明会と意見聴取の実施

市民側:多くの説明会が開催されているとはいえ、業界団体向けが多くを占めているのでは?市民対象の説明会は?

外務省欧州連合経済室:外務省・TPP本部のみならず,農林水産省・財務省・経済産業省でも説明会を実施してきている。市民対象のものは8月札幌で実施した。引き続き開催するが、今後は検討中で未定。業界団体向けも、誰でも参加できる形で多く実施した。

市民側:札幌での説明会開催は日本農業新聞を見て知ったが、外務省HPには掲載されていない。業界団体であれば内部のルートで伝わるだろうが、市民には伝わらない。主管官庁にアクセスすればすべて分かるなど、市民も伝わるような工夫がほしい

外務省欧州連合経済室:地方説明会の準備について、地元の協力を得ながら進めている。外務省単独では地方外郭団体がなく実施が困難のため、都道府県の協力が必要になる。

市民側:市民も直接要請すれば実施可能か?

外務省欧州連合経済室:日程調整は必要だが検討することは可能
国内での説明について、地方に行く余裕があるか、誰が行くのか、関係省庁が多くなればアレンジが難しくなる面はある。人数的な制約等を踏まえて対応可能か検討する必要がある。窓口は、日EU・EPAについては外務省。
                    
<RCEP>
外務省経済連携課:全国的な説明会は実施できていないが、各国交渉関係者とNGOとの意見交換の場は設置。

市民側:神戸交渉会合中の説明会も、市民側が求めてやっと直前に実施が決定した有様。開催に前向きだと言えるか?インドの交渉会合時は、1か月以上前にインド市民団体も知っていた。他国と比べると、市民社会と日本政府の距離感があり問題だ。


③国会での慎重審議

<TPP11>
市民側:あくまでもアメリカが入らねばTPPは成立しないのか?
TPP11は、国会承認は必要か?

内閣官房:TPPはアメリカ無しでは成立せず、TPP11として別物を作っている。アメリカの受け入れ態勢も作っているが、あくまで11か国で発効させるための議論。新しい協定としての国会承認は、太平三原則の要件(※)がなければ必要ではなく、個別対応する。

※太平三原則
①国民の権利義務に係り、法律成立を要する条約
②財政支出を伴う条約
③国家間の基本的関係を規定する条約、は国会による承認を必要とする


 最後に以下の確認を市民側から提起した。
①本日の面談内容は、従来と同様、公表を予定しているので作成後政府にも送付し、内容を確認してもらうことを考えている(文書での回答は多分されないと承知するが)、②本日の面談内容を市民側でも検討し、再度文書を出すなり、面談の申し入れをしたいのでよろしくお願いしたい、③以上のことに関する窓口は、TPP政府対策本部と経済連携課と考えてよいか(これについては、それでよい、との回答があった)

以上

(文責:市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会)