2016年9月14日水曜日

【面談後追加質問報告】8月19日付「7月付要請文に関蓮する追加的質問について」のTPP政府対策本部との面談概要報告

2016年9月6日(火)

8月19日付け「7月付要請文に関蓮する追加的質問について」のTPP政府対策本部との面談概要報告

「TPPに反対する人々の運動」世話人:近藤康男(文責)

〇日時:2016年8月19日(金)14時半~15時半
〇場所:内閣府会議室
当日は、上記の出席者により、7月14日に送付の「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関する再要請における情報公開、政府説明会・対話の実施、パブリックコメントの実施、保秘義務契約についての回答(以上の要請文書は別紙の通り)、及び8月19日付「追加質問」における「規制の整合性」章と「国有企業及び指定独占企業」章の"情報公開に“に係る点について説明を受けると共に意見交換を行いました。そして一定の回答を得たので概要を以下の通り報告します。

なお、7月14日に送付の「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関する再要請に関連する意見交換については本報告では割愛し、別途事務局団体AMネットから報告をする予定であることを申し添えます。

1.規制の整合性の対象規制措置を、当該章の3条の「協定発効後1年以内」ではなく速
やかに公表することについて


(TPP政府対策本部説明)
〇「規制の整合性」は、国内法における相互の整合性について日本政府が措置するもので
あり、国際間・海外の対象規制措置との間の整合性のために締約国との間で決めるもの
ではない
ので、「追加質問」における懸念は考えられないと理解して欲しい。


2.規制対象となる国有企業の企業名を当章の10条「協定発効後6ヶ月以内」でなく速やかに公表することについて

(TPP政府対策本部説明)
〇3月15日付けの緒方林太郎衆議院議員による4点の質問主意書に対し、3月29日付の答弁書の中で11社を示しており、かつTPP協定における「定義」との関連において現在該当する事業体は以上の11社だけであること、他の事業体がその後の組織改編などで、TPP協定における国有企業・指定独占企業に該当することとならない限り、これがすべてである。(別紙主意書・答弁書最下段参照)


3.その後、9月1日に本報告書の作成者から「国有企業章」について3点を確認・質問したところ、矢田参事官より以下の説明・回答を得た。

(1)規制対象となる事業体の選定は、"定義“との関連での条件に係る変化が生じない限り、完了したと理解してよいか?

(TPP政府対策本部説明)
〇その通りである。

(2)規制対象企業の選定は各参加国の合意があった上でされるものなのか?

(TPP政府対策本部説明)
日本政府から通報することで、協定上は充分であり、協議・合意を受けて今回の公表がされている訳ではない。


(3)協定参加国から、対象とすべき国有企業について異論が出た場合などには小委員会などの場での協議を通じた合意が必要となることもあるのではないか?


(TPP政府対策本部説明)
〇(28章の国家間)紛争解決も含め、そういうこともあり得る。


(4)附属書Ⅳにおける、米国を含む10ヶ国による「留保」の内容・企業数・その分野の多いことと比べ、日本政府において「留保」対象企業がゼロであることの違いは余りに目立つと言わざるを得ないが、それは何故なのか?

(TPP政府対策本部説明)
日本の事業体が11社を除きTPP協定の「国有企業章」の規制対象とならず、11社についても「留保すべき」実態(利害)が無いためである。


4.更に9月6日に、8月19日の「規制の整合性章」についてのTPP政府対策本部の説明について、改めて電話で確認を求めたところ、以下の回答を得た。


(1)事前に送付した、本報告書作成者からのメールの概要は次の通り。

〇5章の各条項をあらためて読み込んでみると、
「28章紛争解決」の不適用(11条)、規制措置を定め実施する主権的権利(2条)、対象規制措置策定のための調整・見直しを円滑にするための国内の調整機関の設置(4条)の仕組みを通じて策定され、また規制に関する締約国の取り組み方法が個別的なものとなり得る(5条)こと、が規定されているものの、

〇一般規定の内容や目的(2条)、小委員会(6条)の機能、締約国利害関係者の関与(8条)、実施の通報及び関連する同9条2項の様々な規律(9条)などを通じ、

〇やはり、締約国全体の規制を出来るだけ同様の水準・内容に“収斂していく枠組み”が「規制の整合性」であり、国内・締約国間・各締約国の規制措置の“整合性を追求”するものである、
と理解するのが妥当ではないのか?



(TPP政府対策本部説明)
〇小委員会の設置・機能(6条)、利害関係者の関与(8条)、良い慣行の奨励(5条)、実施の通報(9条)を通じた情報提供・改善・小委員会における検討(9条2~3項)などが推奨されあるいは枠組みとなっているが、あくまで締約国各々の規制について規制措置を定める主権的権利、公共政策を達成する上での規制の役割などの重要性を明確に確認し(2条2項)、自国の規制に関する取り組み方法が個別的なものとなり得ることを認めているなど、各国の規制を同様の水準・内容にすることを規律とするものではない。

また、国家間の紛争解決に関する28章についても不適用としている。



あくまで情報公開を切り口としての質問から始まった面談・質問の機会であるため、“評価”の議論に入ることは避けたが、以下に報告者の個人的な評価を記すこととする。

協定交渉の終盤まで争点の残った「国有企業章」、比較的早期に合意したと言われる「規制の整合性章」であるが、共に“先進国”と“途上国”の利害が大きく異なり、かつ実質的にTPPで初めて登場した分野である。

このため、曖昧さや妥協を多く含んだ、(“霞が関文学”ならぬ)“TPP文学”満載の章となっているとも言える。

規制対象の国有企業(指定独占企業)は11社のみとして明らかにされたが、事業・経営の実態がこれらに類似し、定義上も規制の対象となり得る事業体は他にも相当数ある。

つまり他の締約国との間で争点となり得る事例の存在は否定できないし、一方で国民の暮らしと地域の立場からその存立を欠かすことが出来ない事業体も、附属書Ⅳの留保対象として全く載せられていない点は、他の締約国と著しく異なっている。


規制の整合性についても、日本が交渉参加する以前の米国のTPPのための企業連合の文書や米日協議会に宛てた文書、NZの主張は、あくまでグロ-バルに包括的な規制体系を求める点にあった。そしてそのような主張や“仕掛け”も合意内容には相当に含まれている。

また、(国際公約でないとしているものの)「保険等の非関税措置に関する日本国政府と米合衆国政府との間の書簡」の内容は、あたかも“国家間紛争解決章”の不適用に替わり、締約国間の規制を整合化するかのような内容となっている。この点で日本にとっても多くの途上国にとっても非常に重要でかつ問題の多い章と考える。


最後に、以下の別紙で質問をした“保秘義務契約”の対象には、規制対象の国有企業名、“対象規制措置の範囲”は含まれないこともこの間のやり取りの中で明らかにされたとものと考える。



(参考別紙:8月19日付“追加的質問”)
2016年8月19日(金)
内閣府TPP政府対策本部御中
市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会
「TPPに反対する人々の運動」:近藤康男

7月付要請文に関連する追加的質問について

本日の面談は、主として「情報公開」に関するものと理解します。従って、「情報公開」という観点で下記の通り追加的質問をさせていただきます。直前の質問ではありますが、19日の面談の機会に回答いただければ幸いです。



1.25章「規制の整合性」3条:対象規制措置の範囲
「各締約国は、協定発効後一年以内に自国の対象規制措置の範囲を決定し公表する」とし
ている。

〇国会審議開始前に公表すべきと考えますが如何ですか?
・この章は新たな分野横断的な章で、かつTPPの基本の一つです。対象規制措置が不明なまま審議・批准を求めるのは立法府を無視したものと思います。
あるいは国会議員には公表したのでしょうか?

・ここでの規定は、TPP協定における”保秘義務契約“の対象ではないと思いますが如何でしょうか?速やかに公表することを要請します。


2.17章「国有企業及び指定独占企業」10条:透明性
「協定発効後6ヶ月以内に国有企業の一覧を他の締約国に提供、あるいはウェッブサイトに公表する」としている。

〇対象となる事業体が明らかでなければその影響・効果を国会で審議することも出来ないはずです。このまま批准を求めるのはやはり立法府を無視したものと言わざるを得ません。速やかに公表することを要請します。

・また、ウェッブサイトでの公表を“あるいは”としているのは国民への透明性を二義的に考えていることを意味しており、交渉官同士の透明性でしかなく許せないことです。

・ここでの規定も所謂"保秘義務契約“の対象外と考えますが如何ですか?

・関連の質問です。
国有企業は広範な分野に広がっていますが、例として重要な機能を有する(独法)農畜産業振興機構と国立病院機構について、国有企業章の規制が適用されるかどうか説明を要請します。

いすれの法人も、利益を目的としていないというものの、業務報告書や財務諸表を分析する限り、業務の仕組みも経営の実態も"主として商業活動に従事“していると見るのが自然です。

〇この章の附属書Ⅳでは日本(シンガポ-ルは実質的な留保がされている)だけが留保をしておらず、他の国全てが、広範に渡る国有企業を例外扱いとしています。

日本が全く留保していないのは何故なのか説明を要請します。

(緒方林太郎衆議院議員による4点の質問主意書)

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