2015年11月22日日曜日

【院内集会報告】TPP交渉における情報公開と大筋合意からの撤退を求める院内集会(2015/11/13開催)

TPP交渉における情報公開と大筋合意からの撤退を求める院内集会を
2015年11月13日開催し、入れ代わり立ち代わり、常時会場いっぱいの人に参加いただきました。
意味ある情報公開への要求が高まっています。

記録PDFはこちらから ダウンロードいただけます。

11月13日同日 「TPP交渉および審議・検討における透明性」に関する要請文書を政府に提出しました。



当日動画はこちらから→
https://www.youtube.com/watch?v=CyKNgWMIaFQ


TPP交渉における情報公開と大筋合意からの撤退を求める院内集会開催報告


日時:2015年11月13日(金)15時半~17時
場所:衆議院第一議員会館 地下1階 第3会議室
参加者数:80名(国会議員3名)
篠原孝:「TPPを慎重に考える会」会長・民主党衆議院議員
紙智子:日本共産党参議院議員
畠山和也:日本共産党衆議院議員
(秘書出席:徳永議員事務所・畑直之)
司会:市村忠文(フォーラム平和・人権・環境)


10月5日にTPP閣僚会合で「大筋合意された」との報道がなされており、11月5日に日本政府が概要を公表した。それを受けて今後の運動の方向について考えるため、本日の集会を開催した。


1.政府への要請文書提出とTPP政府対策本部との面談報告


呼び掛け団体「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会」
谷山博史(JVC):

全国から多数の署名を得て、「TPP交渉および審議・検討における透明性」に関する要請文書を政府に提出した。今回の要請の経緯と内容を紹介する。また、政府との面談結果についても報告する。

呼び掛け団体の「全国実行委員会」は、反対・賛成の立場を越えて、TPPに関する市民と政府の意見交換が不可欠と訴えてきており、全国3カ所で民主党政権との対話を行なってきた。また、13年2月には国際的な議員の共同書簡でTPPの情報公開を求めた取り組みに参加した議員と同時期に情報公開署名に取り組んだ市民団体との共同記者会見も行なった。

今回は2015年6月から署名運動を行なってきており、11月現在で110団体以上が署名している。その構成員は350万人近くであり、その人数を代表して賛同していることになるその点も政府に伝えてきた。

今日は、内閣官房の渋谷審議官が自民党の会合に出席する必要があるとのことで、審議官の補佐である矢田参事官と30分ほど面会した。私たちの要請は主に以下の5点。

1.TPPに関する徹底した情報公開
2.TPPに関する誰でも参加できる政府説明会・対話の実施
3.TPPに関するパブリック・コメントの実施
4. 国会への情報公開、国会における特別委員会の設置、詳細審議
5.保秘義務契約の解除


矢田参事官からは、私たちの要請に対し、以下の通り回答があった。

・情報公開については、11月5日に行なっている。

・二国間の交換公文については、双方の合意があるものは公開できるが、ないものは公開出来ない。

・影響試算については2013年に関税について行なった。今回の合意を受けて投資やサービスの自由化など経済全体についての影響試算を行なっており、年内には国会にも出したい。11月下旬には政策大綱を発表し、TPPの効果発現のため及び影響を受けるものへの対策を行う。

・説明会については、10月5日以降は誰でも参加できる説明会を行っている。

・パブコメはなじまないと考えるが、意見聴取はしていく。

・署名についてはアメリカがTPAに基づいておこなう2月3日以降に各国が行なっていくことになる。各国の署名がそろって条文が固まる。それ以降でなければ日本語での条文は出せない。2月以降になる。

谷山:情報公開は不十分ではない。英語圏の人々は全文を見ている。アメリカの議員は大筋合意以前に条文にアクセスできている。日本の人々は情報を得られていない。交換公文に秘密の内容が組み込まれるのではないか、と思う。余りにも不十分な情報公開と言わざるを得ない。このままでは国会での議論ができない。条文の中身がわからないのに、議論ができない。情報公開を行なわず、市民との対話もせずに、大筋合意に至ったことに抗議する。このような形で行われた大筋合意からの撤退を求める。


2.国会議員挨拶


篠原孝・議員(TPPを慎重に考える会・会長):

党内の調整がありTPPについて質問する予算委員会になかなか立てない。「経済連携調査会」を作ったが、TPP賛成派が会長と事務局長に就任した。TPPが矛盾していると思う点は、日本とアメリカが署名すると言ったらそうなることになっている点。国連などは一国一票。では条文はというと、いまあるのは、英語とフランス語とスペイン語。日本語はない。GDPの比率で言うと、日本語が二番目に来るべき。カナダもオーストラリアも後から参加したのに、条文は英語・フランス語で作成されている。「ノン・ペーパー」での交渉も進められており、そこで重要なことが決められ、秘密にされている。

アメリカが批准できない可能性がある。日本でも党議拘束をなくし、各議員の信念で投票すべき。私は党だけで決定するのは良くない、と思っている。イギリスの国会では、条約の投票は党議拘束がかからない。その点でも、日本は国会が機能していない。日本で過去に党議拘束を外した例は、臓器移植法案と国歌・国旗法案だ。


畠山和也・議員:

農林水産委員会に参加している。TPPストップのネクタイを着用している。北海道のJAからいただいたもの。今の状況は野党議員からはフラストレーションがたまるもの。臨時国会は開かれない、情報は公開されない。民主主義が機能しているのか。野党でも閉会中審査を申し入れ、2日間は開かれたが十分ではなく、臨時国会を開くべき。情報を公開しない、日本語にしないなど、国会議員に対する説明責任も果たしていない。北海道JAの組合長は「安保法制と同じように、危機的状況だ。国会決議をきちんと検証する」と話していた。特に、農業生産者の不安と懸念が大きい。情報公開は政府の最低限の責任だ。共産党はTPPからの撤退を方針としている。皆さんと力を合わせていきたい。


紙智子・議員

閉会中審査として、衆議院・参議院で議論した。附属書も含めて3,000ページ以上あると言われているのに、公開されていないので、それらを公開すべき、と発言した。与党は「大筋合意」で決まったものとして、全国で説明会を開き、来年に向けた要求を出せ、と言っている。しかし、私は「大筋合意」ですべてが決まるのではなく、まだ決まっていないと思っている。アメリカもまだどうなるかはわからない。国の影響調査が出てから考える、という意見もあるようだが、国は「影響は少ない」と説明するに決まっている。しかし、現場が影響を一番よく分かってわかっている。

「大筋合意」の内容を巡っても、農産品を巡っても、食の安全を巡っても、結局はアメリカのルールに合わせることになるのでは。特に、食の安全は、各国の制度を変えるものではない、と言われているが、日米の交換文書ではもっと踏み込んだ表現になっている。そうした情報を政府に出させる必要がある。また、自動車は勝ち取ったと甘利大臣は発言しているが、業界自身も関税撤廃についてはほとんど影響がない、と言っている。むしろ、下請けでは、買い叩きの根拠にされるのではと懸念している。農産品についても、首相は「国民との約束は守った」と言うが、とんでもない。農林水産全体で80%も関税を撤廃する、ということなので、一体どこが約束を守ったことになるのか。
これからの調査では、現場の声と実態をよく見聞きし、大変な影響があることとそれへの対策を真剣に審議しなければならない。きちんと対策ができないのであれば、TPP交渉から撤退すべき。


3.賛同団体からの発言


「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」・「TPP阻止国民会議」

国会議員の会と国民会議が共同で活動してきた。これほどの秘密主義のものを国会で決議して良いのか、と思っている。懸念があっても何も相談できない。そこで、アメリカに行き、関係する議員と面会し、関係団体と協議した。国会決議、知事会の決議、県会の決議を英訳して持参した。
アメリカの議員は、日本の議員とは異なり、大学の教授並の真剣さで文章を読んでいた。「こんな状態は民主主義ではないので、私たちにきちんと情報が公開されるよう働きかけていく」と言っていた。シンガポールでの交渉に参加した。特許について、アメリカにほとんど利益を持っていかれるのに、なぜ日本は容認しているのか、と問われた。帰国して、「21項目のうち、どこまで公開するのか」と政府に質問したところ、「4年間は秘密にしなければならない」という回答だった。国会議員にも秘密にするとはどういうことか。きちんと国民に情報を公開した上で条約を結ぶのが基本ではないか。

「TPPに反対する弁護士ネットワーク」
条文がないので何とも言えないのが実情だ。例えば、概要説明のなかで「医薬品」に関して、「承認手続きの時機を経た、合理的な、客観的な、透明性のある及び衡平な態様」という文言がある。これはアメリカの主張するルールで行うということではないか。
SPSについて、「認識の一致を見た」とされているが、その内容を説明がない。紛争解決章に、「パネル」という言葉がある。これは仲裁手続きとどういう関係にあるのか。その定義が示されていない。「労働評議会」とはどのような位置づけか不明。「TPP委員会」を作るそうだが、どのような法的位置づけの委員会なのか。我々の権利を誓約するような条約を日本語で交渉しないのはおかしい。2月まで待っていられない。

賛成と言っている人は、何をもって賛成と言っているのか。「TPP交渉からの脱退」についても、「脱退できる」としか書かれていない。どのような条件でできるのかが書かれていない。農林委員会だけではない。全委員会の議員で議論してほしい。


「主婦連合会」
TPPは消費者が安全な暮らしを営む権利を奪うもの。合意内容を見ると、大幅に譲歩しているし、国会決議に違反している。情報公開についても、甘利大臣は「日本は他国に比べて高い情報公開をしている」と発言していたが、そんなことはない。「一億総活躍」で働いて働いて富を生産しても、一部の大企業にかすめとられる。TPPは一部の人が高笑いをして、ほとんどの人が苦しむ不平等なもの。マスコミも「チャンス」と煽るばかり。市民への情報提供もない。一つ一つ丁寧に議論して、問題があれば撤退という道を考えるべきだが、議論のないまま進められている。

食の安全について、農水省も厚労省からも「問題ない」という説明があるが、まったくそんなことはない。二国間協定だけを見ても、植物検疫の緩和が進むだろう。TPPを待たずして、私たちの生活に影響が及んでくる。消費者運動で積み上げてきた食の安全や環境の規格などがつぶされてしまう。声を上げられる人が上げ続けなければならない。12月9日には「検証TPPー全国フォーラム」を開催する。ぜひご参加をお願いする。こうした催しは全国で開かれる必要がある。


「農民運動全国連合会」
「大筋合意」は、農業・農村を「存立危機事態」に追い込む込むものです。この間、農林水産省と様々なやり取りを行なってきたが、政府は影響を小さく描いて、「攻めの農業」と「対策」するので安心してほしいと言う。

首相は和牛の輸出無税枠が「今の輸出量の40倍に増える」と言うが、増えたとしても牛肉の現在の輸出量150㌧が6250㌧(生産量の1.7%)になるにすぎない。お茶の輸出で静岡や鹿児島が「世界有数に茶所になる」というが、輸出する前に輸入攻勢でつぶされる。
いち早く関税が撤廃されたナタネの自給率はゼロ、大豆7%、1991年のオレンジの自由化で温州ミカンの生産は25%に激減した。関税撤廃や削減で生き残った作物はない。政府は「価格に影響を与える対策は行なわない」と言っているから、実効性のある「対策」は期待できない。TPPから撤退することこそが有効な対策だ。「大筋合意」を撤回させるために力をあわせてがんばる。


「北海道農民連盟」
「病は気から」なので、「元気、勇気、やる気、根気」をモットーに活動している。影響評価が先決。国会決議との比較が必要。それをせずに国内対策が先行している。先日、森山農林水産大臣と面会した。「ここまで来たのだから、国内対策と平行していきたい」という発言だった。全体は3000ページと言われているのに、日本政府が公開している情報はたったの97ページ。これではまったく内容が分からない。日本政府は、決議違反を絶対に認めない。「聖域を守れなければ脱退」と言っているのだから、白紙撤回だ。また、影響を過小評価している。「あっても限定的。将来はあるかもしれない。」という発言だ。

とどのつまり、「やってみないとわからない」ということか。農業は生贄にされ、TPPは農業問題に矮小化されているが、実際は社会全般に影響が及ぶもの。北海道は全国の農地の25%。ただし、冬があるため生産高は12%。連作ができないため、作物を変えていく輪作を行なっている。これらの品目のどれ一つ欠けても輪作ができなくなる。農家のやる気を削ぐもの。離農化政策ではないか。地方創生と逆だ。一番ひどいのは、TPPとセットで行なわれている農協改革。農協の解体につながる。我々の運動には終わりがない。ここがはじまりだ。


「生活協同組合パルシステム東京」
東京都内に45万人の組合員がいる。食の安全を求めるが、それだけではなく、社会作りも目標としている。一市民として発言したい。参事官との交渉に同席した。日本語での情報公開を求めたが、署名後でないと出せない、という答えだった。それでも早く出してほしいというと、「専門用語、法律用語ばかりで皆さん分かりにくいですよ」という趣旨の発言だった。しかし、役人は分かりやすく説明することが私たちの信頼に応えること。そうしないと、私たちの不安が余計煽られる。組合員には、「TPPは命よりもお金を優先するもの」と説明している。参事官は「誤解がある」と言うが、「誤解を解くためにも説明してほしい」と訴えた。

特に気になっているのは、遺伝子組み換え食品。子どもの健康にも影響がある。TPPでは、参加国で情報共有をして対策していく、という報道がされているが、アメリカでは表示すらされない。そのような共有の会議体を持つことで、今は大丈夫でも将来はルールを変えられてしまうのではないか。地産地消運動も、海外の食品を締め出している、とされて止められるかもしれない。食の安全一つとって見ても、すごく不安である。子どもたちの将来の生活を守りたいという一心で活動している。


「全日本民主医療機関連合会」
「大筋合意」では、公的医療制度は守られるという報道がされている。しかし、アメリカがTPPで日本市場に何を期待しているか、というと、医療保険と製薬業界。この分野のアメリカ企業は多額の資金をつぎ込んでロビー活動をしている。国が考えているのは「公的負担が減ればよい」というもので、私たちの負担増には関心がない。公的医療は残るかもしれないが、実際には中身が伴わないものになってしまう。

実際に政府がやろうとしているのは、大病院の外来での定額負担や、薬の保険外しで、保険の対象を狭め患者の自己負担増、という方向。「医薬品の知的財産保護を進める」という文言があることは問題。日本は薬価を公的に決める仕組みがあるが、これがISD条項で訴えられるかもしれない。政府はジェネリックを推進しているが、一方で一錠6万円や8万円といった高価な医薬品もどんどん認可されている。戦略特区では混合診療が解禁されるなど、自由化が進んでいる。医療関係者の中でも、TPPへの反対運動はまだ大きなうねりにはなっていない。一緒に運動を進めている皆さんや他の医療団体と運動を盛り上げていきたい。絶対に批准させてはいけない、と考えている。


「TPP参加交渉からの即時撤退を求める大学教員の会」
三点に絞って話したい。まずは民主主義の問題。学者や学生はこうした問題に非常に敏感。安保法制のときも同じような状況。内容も示さずに賛同せよ、という荒々しいもの。
二点目は、参事官との面会で「影響試算を12月に出す」と言っていた点。これに騙されてはいけない。影響試算はなんとでもなる。我々も2013年にいくつか試算を行なったことがある。
三点目は、大学教員の会は様々に異なる意見を持って反対しているため、貿易の自由化を一概に否定はしていない、という点。しかし、アメリカとの貿易の自由化は避けるべき。日本の農業は努力をしているが、それに報いるような農業政策になっていない。

中国農業を調査していると、日本との違いが浮き彫りになる。中国では、毎年毎年異なるものを作付けしている。そうすると、品質は高くない。日本の場合は、同じ品目を毎年作っているため、相当の努力をしている。農産品の自由化もこれが報われる国に対してのものでなければならない。アメリカとの自由化ではダメだ。



4.意見交換・質疑

会場から:
SPSの報道について。1)貿易に対して不当な障壁にならないという大目的。中身は、利益を追求するもの。グレーゾーンの問題を捨象してしまう。2)紛争解決ルールを用いて国家間の交渉を行うが、その際に厳密な科学的証拠を出さなければ負けてしまう。3)貿易禁止の例外規定を認める。4)輸入手続きの迅速化。5)日本の制度および各国の制度が脅威にさらされる。

会場から:
サイドレターは最後まで出てこないものもあるのか。条文が出てくる際にはサイドレターも全部出てくる、ということか。
WTO協定で、すでに高等教育が自由化された。これは、お金を持つ人にしか情報を知らせない、ということか。英語がわからない人は分からなくて良い、ということか。英語が分かる人は、翻訳したものを、インターネット上に上げて誰でも読めるようにしたほうがよい。分析だけでなく、原文も読めなければ判断できない。


会場から:
TPP対策本部に電話し、日本語の成文を出すのか、と尋ねたら「出さない」という回答だった。その後、「国会審議の際は日本語訳を出す」という発言もあった。なぜ主権者に翻訳文を出さないのか。英語圏の人々は読めるのに、日本語で読めないのはおかしい。概要ではどのような議論がされるのかわからない。


市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会(谷山):
交換公文について。参事官は「二国間の交換公文は合意がなければ出さない」という発言だった。ただ、公開せずに条約の審議ができるのか、という問題がある。国会にも公開しないのか、市民には公開しないのか、どちらなのか、あるいは両方なのかは確認が必要。


市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会(谷山):
情報公開の運動は継続していかなければならない。市民は不安だがよくわからない、メリットもありそうだとうのが多くの反応だ。協定の本当の中身を知らず、メリットを強調する一方的な情報の洪水に晒されればそうなる。情報公開で正確な情報がでればどこかで潮目が変わるであろう。安保法制も、憲法違反ということで潮目が変わった。情報公開を求める運動は今でも極めて重要である。さまざまな団体と連携して署名・批准の流れを止めよう。


市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会・TPPに反対する人々の運動(近藤):
次第に記載されている今後の活動について報告する。
記載されていないが、この他、11月17日に渋谷で官邸前アクションによる行動、12月20日に渋谷または新宿での街頭行動を予定している。若者の参加も呼びかけている。今日の夜は連合会館でアジア太平洋資料センタ-主催の緊急集会がある。


以上


(文責:市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会事務局)