2013年6月30日日曜日

【Inside U.S. Trade6/28】マレーシア政府はTPPの14章は「実質的に完了」と発表、反対も列挙


Inside U.S. Trade June 28, 2013


Malaysia Says 14 TPP Chapters 'Substantially Closed,' Lists Objections

マレーシア政府はTPP14章は「実質的に完了」と発表、反対も列挙


マレーシア政府は先週、TPPで交渉中の29章のうち14章は「実質的に完了している」ことを明らかにした。ただし、これらの章のなかのセンシティブな問題は依然として残っていることを強調した。これらは、おそらくはより高度な政治的レベルにおいて、後の交渉のなかで取り上げられるだろう。

620日にウェブサイトに掲載されたペーパーのなかで、マレーシア国際貿易産業省(MITI)は、これらのセンシティブな問題を協議するために、交渉担当者達が議論している4つの一般的なオプション(選択肢)を提示した。すなわち、①コミットメント(約束)の水準を下げる、②実施のためのより長期の移行期間を設ける、③非適合措置(non-conforming measures)のリストでコミットメント(約束)を限定する、④完全実施、である。

さらに、このペーパーは、TPPISDSを導入することを擁護し、(TPP)交渉の秘密性に関する市民社会組織の批判に反論した。

このペーパーによれば、実質的に完了しているチャプター(章)は、①衛生植物検疫(SPS)措置、②税関、③越境サービス貿易、④電気通信、⑤一時的入国、⑥政府調達、⑦労働、⑧協力とキャパシティー・ビルディング、⑨競争とビジネス促進、⑩開発、⑪中小企業(SMEs)、⑫規制の整合性、⑬設立条項及び定義、⑭協定管理及び制度的条項、である。

このことは、技術的な作業が完了し、最もセンシティブな問題が残っているTPPのチャプター(章)は、規制の整合性、税関、開発、電気通信及び中小企業である、としていたUSTR発表のレベルを超えている。

このペーパーによれば、TPP交渉において、マレーシアにとって最も課題となっている分野は、政府調達、知的財産権(IPR)、国有企業(SOEs)、労働、環境である。このペーパーは、これら4つの分野について、マレーシアの(交渉)ポジションに関する詳細な説明を行っている。

マレーシア政府は、715日~25日にマレーシアのサバ州都のコタキナバルで開催される次回TPP交渉会合に向けて、このペーパーを発表した。マレーシアの主要な反対政党と国内のビジネス団体が、マレーシアのTPP交渉参加に関する情報提供を求めたことに応じて、このペーパーは発表された。

政府調達のチャプター(章)のテキストは実質的に完了している可能性があるが、このペーパーは、TPP諸国の外国企業に対する政府による契約の開放について、マレーシアはいくつかの例外を求めていることを明らかにした。

特に、マレーシア政府は、少数民族のマレー人とそれ以外の先住民が営む中小企業(SMEs)とブミプトラに対する政府調達の優遇措置を守りたいとしている。このペーパーによれば、これらの分野は、マレーシアの最初のオファーからは除外され、(マレーシア)政府はこの(交渉)ポジションを維持する意向である。

ブミプトラを優遇するマレーシアの(政府)調達政策は、2009年の米国とマレーシアのFTA交渉において、最終的に破綻を引き起こした主要な難航点である。政府調達の専門家が今週述べたところによれば、当時、マレーシア政府は(政府)調達市場の開放交渉を拒否した。

このペーパーの中で、マレーシア政府は選ばれた人々の集団(ブミプトラなど)に対するこれらの(政府)調達の優遇措置を維持し続けるが、マレーシアのビジネスが、他のTPP参加国の政府調達市場へのアクセスを増加させてきたことを確保したい、と述べている。

政府調達の専門家は、マレーシアはFTAにおいて政府調達の開放をこれまで導入したことはない、と述べた。TPPはマレーシアがそのようなコミットメント(約束)を導入する最初の機会になるだろう。

このペーパーによれば、マレーシアが政府調達について除外を求めているもうひとつの分野は、BOT方式の契約である。この契約の下で、私企業(外国企業)はプロジェクトを起ち上げ、一定期間それを運営し、最終的にプロジェクトの管理をその国の政府に移転する。

この(政府)調達の専門家が述べるところによれば、他の国と同様に、マレーシアはBOT方式のプロジェクトで除外を求めているようである。その理由は、マレーシアはこの分野で国内企業の優遇を維持しており、BOT方式の契約を対象とした固有の(政府)調達のルールを有している。そのルールは、BOT方式以外の政府調達に適用されるルールとは異なっている。

また、TPPは建設サービス分野の政府調達において、調達基準額(threshold)を段階的に導入する長い移行期間を設けているが、マレーシア政府はこの交渉で闘っているとこのペーパーで述べている。この基準額の下で、外国企業はプロジェクトの対象外となるだろう。このペーパーの中で、マレーシア政府は、現在のマレーシアの(政府調達の)オファーは「ひじょうに高い」基準額を設定していると述べている。

この専門家が述べるところによれば、一般的に、米国のFTAはすべての締約国に、同じ基準額を適用するよう求めている。しかし、いくつかのケースでは、米国は相手国に対して、より高い基準額を設定できる概して23年の移行期間を与えている。

米国は常に、FTAの建設サービスにおいて、WTOの政府調達協定(GPA)と同じ基準額を適用している。この専門家が述べるところによれば、(政府調達の)物品とサービスに対しては、米国は常にGPAのコミットメント(約束)を下回る基準額を適用している。

GPAにおいて、米国は建設サービスについて、500SDR(特別引出権)の基準額を適用することを合意している。これは770万ドルに相当する。SDRは、IMFによって用いられている金額の単位であり、主要な通貨のバスケットにより設定されている。

このペーパーによれば、国有企業の問題では、マレーシア政府はTPP協定において、国有企業の存続と政府系企業(GLCs)が「経済活動を行い、公共・社会的な財・サービスの供給を許容するような」「柔軟な取り扱い(flexibilities)」を求めている。

このペーパーは、マレーシアは「各国は、国有企業の保有も含めて異なる経済システムを有し、政府系企業はマレーシアのような国では経済の分野で重要な役割を果たしている、という議論を展開している」と述べている。同時に、このペーパーは、マレーシアは「公正な競争条件(level-playing field)」は現地及び外国企業の双方にとって必要であることを認識している、としている。

知的財産権(IPR)の分野において、マレーシアは、医薬品と医療へのアクセス、医薬品の価格高騰の可能性、より長期の著作権(保護期間)の設定、といった問題を懸念していると述べている。

マレーシア政府はこのペーパーの中で、「マレーシアは、市場へのジェネリック医薬品の導入を遅らせ、医薬品の価格において高いコストをもたらすような提案に対する反対を強力に提起してきた」と述べている。

マレーシア政府は、手頃な価格で医薬品を入手することと、製薬企業が革新に取り組むためのインセンティブを両立させるような結果を出すために、TPP参加国と共に作業している、と付け加えている。

米国は当初から、最大の特許保護を受けられるように、TPP諸国において一定期間、新薬メーカーに販売承認の権限を与えるような仕組みを提案してきた。しかし、この提案に反対するTPP諸国もあり、直近の交渉会合においても、チリ・NZを含む参加国のグループは、医薬品の知的財産を保護するための何らかの共通原則を規定するディスカッション・ペーパーを提案した(インサイド誌524日号参照)。(Adam Behsudi署名記事)

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