2013年6月30日日曜日

【Inside U.S. Trade6/28】マレーシア政府はTPPの14章は「実質的に完了」と発表、反対も列挙


Inside U.S. Trade June 28, 2013


Malaysia Says 14 TPP Chapters 'Substantially Closed,' Lists Objections

マレーシア政府はTPP14章は「実質的に完了」と発表、反対も列挙


マレーシア政府は先週、TPPで交渉中の29章のうち14章は「実質的に完了している」ことを明らかにした。ただし、これらの章のなかのセンシティブな問題は依然として残っていることを強調した。これらは、おそらくはより高度な政治的レベルにおいて、後の交渉のなかで取り上げられるだろう。

620日にウェブサイトに掲載されたペーパーのなかで、マレーシア国際貿易産業省(MITI)は、これらのセンシティブな問題を協議するために、交渉担当者達が議論している4つの一般的なオプション(選択肢)を提示した。すなわち、①コミットメント(約束)の水準を下げる、②実施のためのより長期の移行期間を設ける、③非適合措置(non-conforming measures)のリストでコミットメント(約束)を限定する、④完全実施、である。

さらに、このペーパーは、TPPISDSを導入することを擁護し、(TPP)交渉の秘密性に関する市民社会組織の批判に反論した。

このペーパーによれば、実質的に完了しているチャプター(章)は、①衛生植物検疫(SPS)措置、②税関、③越境サービス貿易、④電気通信、⑤一時的入国、⑥政府調達、⑦労働、⑧協力とキャパシティー・ビルディング、⑨競争とビジネス促進、⑩開発、⑪中小企業(SMEs)、⑫規制の整合性、⑬設立条項及び定義、⑭協定管理及び制度的条項、である。

このことは、技術的な作業が完了し、最もセンシティブな問題が残っているTPPのチャプター(章)は、規制の整合性、税関、開発、電気通信及び中小企業である、としていたUSTR発表のレベルを超えている。

このペーパーによれば、TPP交渉において、マレーシアにとって最も課題となっている分野は、政府調達、知的財産権(IPR)、国有企業(SOEs)、労働、環境である。このペーパーは、これら4つの分野について、マレーシアの(交渉)ポジションに関する詳細な説明を行っている。

マレーシア政府は、715日~25日にマレーシアのサバ州都のコタキナバルで開催される次回TPP交渉会合に向けて、このペーパーを発表した。マレーシアの主要な反対政党と国内のビジネス団体が、マレーシアのTPP交渉参加に関する情報提供を求めたことに応じて、このペーパーは発表された。

政府調達のチャプター(章)のテキストは実質的に完了している可能性があるが、このペーパーは、TPP諸国の外国企業に対する政府による契約の開放について、マレーシアはいくつかの例外を求めていることを明らかにした。

特に、マレーシア政府は、少数民族のマレー人とそれ以外の先住民が営む中小企業(SMEs)とブミプトラに対する政府調達の優遇措置を守りたいとしている。このペーパーによれば、これらの分野は、マレーシアの最初のオファーからは除外され、(マレーシア)政府はこの(交渉)ポジションを維持する意向である。

ブミプトラを優遇するマレーシアの(政府)調達政策は、2009年の米国とマレーシアのFTA交渉において、最終的に破綻を引き起こした主要な難航点である。政府調達の専門家が今週述べたところによれば、当時、マレーシア政府は(政府)調達市場の開放交渉を拒否した。

このペーパーの中で、マレーシア政府は選ばれた人々の集団(ブミプトラなど)に対するこれらの(政府)調達の優遇措置を維持し続けるが、マレーシアのビジネスが、他のTPP参加国の政府調達市場へのアクセスを増加させてきたことを確保したい、と述べている。

政府調達の専門家は、マレーシアはFTAにおいて政府調達の開放をこれまで導入したことはない、と述べた。TPPはマレーシアがそのようなコミットメント(約束)を導入する最初の機会になるだろう。

このペーパーによれば、マレーシアが政府調達について除外を求めているもうひとつの分野は、BOT方式の契約である。この契約の下で、私企業(外国企業)はプロジェクトを起ち上げ、一定期間それを運営し、最終的にプロジェクトの管理をその国の政府に移転する。

この(政府)調達の専門家が述べるところによれば、他の国と同様に、マレーシアはBOT方式のプロジェクトで除外を求めているようである。その理由は、マレーシアはこの分野で国内企業の優遇を維持しており、BOT方式の契約を対象とした固有の(政府)調達のルールを有している。そのルールは、BOT方式以外の政府調達に適用されるルールとは異なっている。

また、TPPは建設サービス分野の政府調達において、調達基準額(threshold)を段階的に導入する長い移行期間を設けているが、マレーシア政府はこの交渉で闘っているとこのペーパーで述べている。この基準額の下で、外国企業はプロジェクトの対象外となるだろう。このペーパーの中で、マレーシア政府は、現在のマレーシアの(政府調達の)オファーは「ひじょうに高い」基準額を設定していると述べている。

この専門家が述べるところによれば、一般的に、米国のFTAはすべての締約国に、同じ基準額を適用するよう求めている。しかし、いくつかのケースでは、米国は相手国に対して、より高い基準額を設定できる概して23年の移行期間を与えている。

米国は常に、FTAの建設サービスにおいて、WTOの政府調達協定(GPA)と同じ基準額を適用している。この専門家が述べるところによれば、(政府調達の)物品とサービスに対しては、米国は常にGPAのコミットメント(約束)を下回る基準額を適用している。

GPAにおいて、米国は建設サービスについて、500SDR(特別引出権)の基準額を適用することを合意している。これは770万ドルに相当する。SDRは、IMFによって用いられている金額の単位であり、主要な通貨のバスケットにより設定されている。

このペーパーによれば、国有企業の問題では、マレーシア政府はTPP協定において、国有企業の存続と政府系企業(GLCs)が「経済活動を行い、公共・社会的な財・サービスの供給を許容するような」「柔軟な取り扱い(flexibilities)」を求めている。

このペーパーは、マレーシアは「各国は、国有企業の保有も含めて異なる経済システムを有し、政府系企業はマレーシアのような国では経済の分野で重要な役割を果たしている、という議論を展開している」と述べている。同時に、このペーパーは、マレーシアは「公正な競争条件(level-playing field)」は現地及び外国企業の双方にとって必要であることを認識している、としている。

知的財産権(IPR)の分野において、マレーシアは、医薬品と医療へのアクセス、医薬品の価格高騰の可能性、より長期の著作権(保護期間)の設定、といった問題を懸念していると述べている。

マレーシア政府はこのペーパーの中で、「マレーシアは、市場へのジェネリック医薬品の導入を遅らせ、医薬品の価格において高いコストをもたらすような提案に対する反対を強力に提起してきた」と述べている。

マレーシア政府は、手頃な価格で医薬品を入手することと、製薬企業が革新に取り組むためのインセンティブを両立させるような結果を出すために、TPP参加国と共に作業している、と付け加えている。

米国は当初から、最大の特許保護を受けられるように、TPP諸国において一定期間、新薬メーカーに販売承認の権限を与えるような仕組みを提案してきた。しかし、この提案に反対するTPP諸国もあり、直近の交渉会合においても、チリ・NZを含む参加国のグループは、医薬品の知的財産を保護するための何らかの共通原則を規定するディスカッション・ペーパーを提案した(インサイド誌524日号参照)。(Adam Behsudi署名記事)

2013年6月22日土曜日

【Inside U.S. Trade - 06/21/2013】米日のTPP市場アクセス交渉は8月末まで始まらない(仮訳)

【Inside U.S. Trade記事紹介】

7月マレーシアの後の全体交渉は9月の予定です。

これまでも言われてきましたが、「日本がルールメイキングに参加」などできないことが、さらに明らかになりました。

また最後の一文に『「日米事前協議合意」で,「日本政府は重要農産物であれ何であれ,あらかじめ関税撤廃例外になどしないことに合意』したとあり、非常に重要な記載です。

※補足や誤り等ありましたら、TPP意見交換会・全国実行委員会暫定事務局amnetosaka【あっと】yahoo.co.jp までご指摘いただけると幸いです。
※なお引用等をされる際は,本サイト名および個別翻訳文書の訳出者氏名を注記していただくよう,ご配慮お願い致します。
 

(※は訳者注釈)


【Inside U.S. Trade - 06/21/2013】米日のTPP市場アクセス交渉は8月末まで始まらない(仮抄訳:磯田宏)


日本のTPP交渉への参加は,公式には来月(7月)に始まるが,2つの重要な理由から実際の開始は遅くなりそうである。理由の一つは,アメリカが少なくとも8月下旬まで市場アクセス交渉を行なえないということである。



1974年通商法にの定めによって,アメリカ政府は,国際通商委員会(ITC)が関税削減の影響に関する秘密の評価を完了するまでは,いかなる関税譲許のオファーもすることができない。USTRに対するこの評価報告書の締め切りが8月21日となっているのだ。USTRスポークスマンによれば,この報告書が受理され,USTRが省庁間および連邦議会との協議を終えるまで,アメリカは譲許オファーをしない。


第二の要因は,日本が7月15~25日に予定されているマレーシア全体交渉にほぼ2日半しか参加できないという事実である。日本政府は,オバマ政権と議会の90日協議期間が終了する7月23日の午後から交渉に参加するつもりだとされる。日本の懇願によって既存交渉国は当初の予定を1日延長して7月25日までとしたが,この25日は,各交渉部会担当者は公式に会合せず,交渉官達は日本の交渉官が交渉テキストを理解できるように,この1日を充てるということである。


そこで日本がマレーシア全体交渉で参加開始すると,日本はそれぞれの交渉部会の進行状況についての情報を収集し,おそらくは各交渉分野についての日本の基本的立場を説明するであろう,と日本担当官は述べている。

「我々は交渉テキストにコメントできる立場にはたちえないだろう。我々にできることは,せいぜい各分野での基本的立場を説明することだけだ。」

日本はこの7月全体交渉でいかなるテキスト状の提案もしない(※できるわけがない。テキスト本文も関連文書もほとんど読解できもしないまま,限りなく「座っているだけ」である)。日本が実際に交渉戦略を構築する作業は,マレーシアから帰国して後に,いかなる交渉ポジションを取るかを集中的に議論しなければ始まらない。



東京での消息筋によれば,日本の最初の市場アクセスオファーは,米,乳製品,および牛肉といった重要農産物に対する関税削減について明確化するということにはならないだろう。逆に,日本が交渉に参加する条件(※各国との事前協議合意)によればmこれら重要品目も他のTPP交渉国からの(※関税撤廃)要求から除外することは出来ないのである。



TPP交渉と並行して,米日両国は自動車(※自動車貿易)と非関税諸措置についての(※2つの2国間)交渉を行なうことを約束している。これらは日本がTPP交渉に公式に参加した後から開始されるということである。しかし両国はこれらの並行交渉について,まだスケジュールを確定していない。アメリカのある民間消息筋によれば,USTRは利害関係者からの意見を集めるために協議してきており,それよってこの2つの2国間並行交渉でのUSTR側ポジションを定める作業を今も行なっている。



日本政府と自民党は,(※ただ)7月21日参議院選挙の投票者向けに自分達はTPP交渉に本格的に前進していると見せるために(※見せかけるためだけに),7月マレーシア全体交渉への参加に固執してきたのである。



日本政府が事前協議で数多くの譲歩に合意してしまった後だけに,もし日本がTPP交渉にできるだけ早く参加するということにならなければ,選挙において政府(※自民党)への評価が下がることになるだろうという指摘もある。アメリカとの事前協議合意において,日本政府は,重要書品目についていかなる事前の除外もしなこと,およびアメリカの自動車輸入関税の漸次的撤廃について最大限可能な長期間をかけることについて,合意してしまったのである。



Inside U.S. Trade - 06/21/2013

U.S.-Japan Market Access Talks In TPP Not To Begin Until Late August

Posted: June 20, 2013



Japan's participation in the Trans-Pacific Partnership (TPP), which will formally begin next month, will likely get off to a slow start for two key reasons, one of which is the inability of the United States to engage in market access talks until at least late August.


Under the Trade Act of 1974, the U.S. will be prevented from making any tariff offers until the International Trade Commission (ITC) has completed a confidential assessment on the economic impact of tariff cuts. The report is due to the Office of the U.S. Trade Representative on Aug. 21. The U.S. will not table any tariff offers until the report is received and USTR has performed interagency and congressional consultations, according to a USTR spokeswoman.


The second factor stems from the fact that Japan will only participate in TPP for roughly two and half days in the round scheduled to be held from July 15-25 in Malaysia. Informed sources said Tokyo will get to participate starting the afternoon of July 23, when a 90-day consultation period between the Obama administration and Congress concludes.

Sources said the round was initially scheduled to end on July 24, but current TPP countries agreed to extend it by one day to July 25, as a courtesy to Japan. On July 25, TPP negotiating groups will not formally meet, and negotiators will devote the day to familiarizing Japanese officials with the text, they said


Once Japan starts participating in the Malaysia round, it will gather information on the progress of each negotiating group and possibly explain its basic positions in each negotiating area, a Japanese official said. "We will not be in a position to comment on the text; at best what we can do is explain our basic position in each area," the official said.

Japan will not make any textual proposals during the July meeting, he said. The real work of developing a negotiating strategy will occur after Japanese officials return to Tokyo, where intense discussions will take place on what positions to stake out in the talks, the official said.


An observer in Tokyo said there is an expectation that Japan's initial market access offer to TPP members will not define tariff reductions on sensitive agricultural items including rice, dairy and beef. But according to the terms of Japan's entry into the talks, these sensitive items cannot be excluded from being subject to requests from other TPP participants.

Japan will likely make offers on market access for goods, services and government procurement to TPP members shortly after the July round, a Japanese official said.


Parallel to TPP, the U.S. and Japan have committed to holding negotiations on automobiles and non-tariff measures. These will begin after Japan formally joins the TPP negotiations, according to Japanese officials.

However, the two sides have not yet finalized a schedule for those parallel talks, which on the Japanese side will be coordinated by the Ministry of Foreign Affairs, an official said. A U.S. private-sector source suggested that USTR is still defining its position for these talks as it has been reaching out to stakeholders for input.

Observers this week said any delay in market access negotiations with Japan, which is expected to be the most contentious element of Japan's participation in TPP, makes the prospects more and more dim for concluding a deal in the near term.


Japan had pushed to participate in the July round, even if only for a few days, to show voters in an upcoming July 21 upper house election that it is moving forward with substantial engagement in TPP. Sources in Tokyo said the Liberal Democratic Party wants to show the government will be substantively engaged in the talks, especially ahead of the elections where the party hopes to cement its control over the Japanese Diet.


One observer said it would reflect poorly on the government in the elections if it was known that Japan would not be participating in the talks as soon as it could, especially after it agreed to a number of concessions in order to join the talks. In an agreement with the U.S., Japan agreed that it would not make any upfront exclusions for sensitive items and also agreed to a potentially lengthy phaseout period on U.S. automobile tariffs. -- Adam Behsudi


Inside U.S. Trade - 06/21/2013, Vol. 31, No. 25

2013年6月20日木曜日

「TPP;業界団体等への説明会」参加報告並びに「TPP交渉に関する市民参加の説明会・パブリック・コメント実施の要請ご賛同の呼びかけ」


【ページ概要】

・政府主催の「TPP;業界団体等への説明会」を受けて、TPP交渉に関する市民参加の説明会・パブリック・コメント実施の要請ご賛同の呼びかけ

・政府による6月17日「TPP;業界団体等への説明会」参加報告

・TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉に関する市民参加の説明会開催ならびにパブリック・コメント実施の要請

団体賛同受付継続しています。
第2次締切:6月24日、第3次締切:7月末と継続して募りますので、賛同・ご協力のほどよろしくお願いいたします。
 
※一次集約と同文です。すでに賛同いただいた団体様はリストしておりますので、再度賛同いただく必要はありません。拡散、賛同依頼等、ご協力いただけると助かります。
 

【関係資料】
・内閣官房Web「TPP;業界団体等への説明会」配布資料等はこちらから。
・当日配布された、参加予定業界団体等一覧はこちらから
・当日配布された、意見聴取についての説明はこちらから

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政府主催の「TPP説明会」を受けて、

TPP交渉に関する市民参加の説明会・パブリック・コメント実施の要請ご賛同の呼びかけ

 

「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会」は、20122月より政府に対してTPP交渉参加に関する情報公開と説明、市民との対話の場を求める折衝を行ってきました。TPP交渉は極度の秘密交渉であり、私たち日本の市民はもちろん、すでに参加している国の人びとでさえも、交渉内容を十分に知ることができません。こうした中で「参加の是非」を決めたり、市民の意見を交渉に反映させることなど不可能です。折衝の結果、20125月以降、東京、 大阪、名古屋・岐阜にて「市民と政府の意見交換会」が実現しました。

 
去る617日、政府は、「TPP協定交渉に係る意見提出等のための業界団体等への説明会」(以下「説明会」)を実施、合計で128団体が参加しました。説明会は主に各業界団体を対象としていますが、市民団体の一つとして私たち「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会および各地実行委員会」にも案内が届きました。もちろん私たちが全国に何万とある市民団体・NPO・各種団体を代表する資格などはありませんが、上記のとおり、市民団体の全国ネットワークとして2年近く政府と折衝してきた流れから声かけされたという経緯です。
 

しかしながら、この説明会は128団体のみに声がかけられただけで、その他のいかなる団体・市民は参加する機会すらなく、開催の情報自体多くの方が知ることができませんでした。また今回の説明会参加団体には、別途「TPP交渉に関する意見聴取」という機会が与えられその説明も当日なされました。その時点では聴取は参加団体に限られるとのことでしたが、説明会翌日、内閣官房のホームページには「今回参加していない団体についても意見聴取を行なう」旨が書かれていました。参加団体以外からも意見聴取の機会が設けられたことを私たちは評価していますが、今回の意見聴取は、行政手続法にのっとったパブリックコメントとは異なり、また個人は意見を述べることができません。

 

すでに私たちは、説明会の前に、限定的な参加による説明会や意見聴取の場は、市民社会の原則である「平等性・公開性・市民の参加」に反するものであるとし、広く市民に対する公開の説明会の実施とパブリックコメントを要請する文書を政府に提出しました。

しかし説明会に参加した後、改めて上記要請の必要性を強く感じています。以下に、説明会の簡単な報告をさせていただいた上で、改めて上記要請をより多くの団体の方に呼びかけますので、ぜひご賛同をお願いいたします。

 

2013619

 

市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会

 
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【政府によるTPP説明会の報告】

 

○正式名称:「TPP協定交渉に係る意見提出等のための業界団体等への説明会」

○日時:2013617日(月)

※午前・午後2回にわけて開催。各回とも1時間半の開催。

※「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会」は午後に参加

○場所:第4合同庁舎

○出席団体:業界団体を中心とする128団体別添①参加団体リスト

○政府出席者:内閣審議官・石井氏、内閣官房TPP政府対策本部参事官・高橋氏、農林水産省国際部国際交渉官・郷氏、外務省経済連携課室長・別所氏、内閣官房TPP政府対策本部広報企画官・中川氏、財務省関税局関税地域協力室長・栗田氏、経済産業省経済連携課課長補佐・猪俣氏

 

●議事

1.説明会の議事の説明

 

2.挨拶:石井内閣審議官より

   7月下旬より日本政府はTPP交渉に正式に参加見込みである。午前中の参加団体は1年以上前にTPPに関する懸念や疑問について各担当省庁からヒアリングを行なった団体が中心である。午後は本格的に交渉に入る前に、各省庁からの推薦により集まっていただいた団体である。合計で128団体、分野も商業、工業、農業、医療など多岐にわたっており、幅広い分野の皆さまから意見を出していただくのは初めてである。政権交代して2月に安倍総理が訪米し日米共同声明を発表、センシティブ分野を認めた上で協力を確認した。315日、交渉参加表明をした。貿易立国で経済をけん引してきた日本が、アジア経済が伸びていく中でモノだけではなくサービスなども含めて伸びていかなければ日本の成長、日本の地位も危うい。そこで交渉参加の決断をしました。その後の日米協議を経て、インドネシアAPECにて11ヶ国からの承認も得られた。現在は米国の議会承認手続きのプロセスである。

   TPP交渉は3年近く進められており日本は後から参加することになり、100%の馬力で交渉に参加しなければ取れるものも取れない。今日の開催の主旨はこれらの交渉を進めるにあたり各分野の諸団体の皆様に交渉内容を理解していただき、このような分野のこれを取るべき、あるいは譲るべきではない、国内対策について、皆さまの得手の分野について政府にお知恵を貸していただきたいということ。

   今回の意見聴取の内容は基本的に公開するが、ビジネス上不都合である場合は公表を控えるので別個の非公開用書式に書いていただきたい。また今回、128団体のご意見をうかがうが、行政手続法に基づく意見聴取ではない。

 

3.高橋参事官より説明(約60分)

TPP交渉の現状および日本政府の方針について説明

(内閣官房のHPに掲載。http://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo.html#setsumeikai

②各団体からの意見聴取の方法・期日等の説明別添②意見聴取書式

   *配布された書式に記入してもらい、指定のメールアドレスに送付。

   *締め切りは717日まで。

 

3.質疑応答(20分程度)

  ○神田浩史(「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会」)

   本日の『東京新聞』一面に「44府県議会でTPPに反対・慎重」との記事がある。私の住む岐阜県も日本のTPP交渉参加表明後に決議をあげている。全国各地の方々はいまも情報がない状態であることを懸念している。これまで私たちは政府との折衝を通じて3か所で「市民と政府のTPP意見交換会」を実施してきたが、残念ながら予定されていたが実施されていない地域もある。すでに「各地で市民参加の説明会を開催」と行政手続法にのっとった「パブリック・コメント実施」も改めて要請したい(すでに昨夜送付済)。今後交渉に参加するにあたり日本の市民の声を政府が把握されることが交渉にとっても重要と考え提案したい。

  ○生命保険協会:今回の政府のスタンスは「攻めるべきところを攻める。守るべきところを守る」だと思うが、今回の意見聴取はどこまでの範囲を想定しているのか。

○石井審議官:まず2番目の質問については守るべきものも含む。今後は交渉官が相当厳しいせめぎ合いを交渉の中で行なうことになる。そのような場合に専門的な背景をつかんだ各団体の意見が力になる。

 また最初の質問については、私自身も地方シンポジウムに出させていただき大変価値あるものだった。今後も必要に応じてそのような対応をしたいが、一方、今後日本は交渉参加に3年遅れで入ることになり、相当の激務になる。これからは一手一手を間違えていかないようバランスを考えながらやらねばいけない。都道府県、市町村連合会については東京の連絡事務所を通じて説明をさせていただいている。先般も新潟県について東京で会議をやっていただき、そこに私どもが出向いていった。しかし今後は国外交渉が主軸になることをご理解いただきたい。

 パブリックコメントについては、前政権のもとで「政策コンテスト」というものを行なったら36万件のコメントが集まった。何十人という職員が整理にかかりきりになった。これから我が国が3年遅れて入ることを考えると最初から全速力で取り組む必要があることをご理解いただきたい。もちろん節目節目にはできる範囲内で情報提供をしていきたい。

  ○日本医療経営コンサルタント協会:国民皆保険制度は堅持する方向との説明があったが医療法人制度も国民皆保険制度とは一体・両輪である。投資が自由になっても医療法人制度は守られるのか?

○石井審議官:米国のカトラー代表補は医療サービス提供者としての民間医療サービスを要求していないと明言している。

○高橋参事官:営利企業の医療参入について2006年の日米投資イニシアティブ報告書では対日要求の中に、医療分野への株式会社参入、規制緩和等が入っていたが、2012年の同報告書ではなくなっているというのが現状である。

○化学工業協会:意見を聞いていただけるのは今回が最後か?交渉の間で意見を募ることはあるのか?

○石井審議官:現時点では決めていないが、交渉官は各専門分野の人間をつける予定である。しかし皆さんのような業界団体の方が交渉に関する情報を早く入手する場合もあるだろう。その場合は今回に限らず早めに普段関係する省庁に情報を入れていただきたい。

  ○内田聖子(「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会」)

私自身は、シンガポール(3月)、ペルー(5月)のTPP交渉会合に米国NGOの一員としてステークホルダー会議にも参加した。交渉の現場では政府とステークホルダーが情報交換をしつつ進めており、事前に交渉官の名前や連絡先が明らかになっているケースが多い。日本政府はすでに首席交渉官を決めているが、各分野の交渉官が決まるのはいつ頃か。また各分野交渉官の名前や連絡先は公表されるのか。各交渉官と各団体が個別に連絡をとることは可能か。他国では、交渉会合後に国内においてステークホルダーに対する説明会を開いていることが多い。そのような場の必要性を感じるが政府の方針は?

○石井審議官:交渉官は近いうちに任命し発表する予定である。交渉官のコンタクトは主席交渉官に確認する。ただ交渉官に一度にたくさんの方から連絡あるのも大変なので検討したい。交渉会合は2か月に一度のペースだが2か月に一度できるかはわからないが節目節目にそのような機会を持つようにぜひとも検討していく。

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●説明会に参加して―さらなる賛同の呼びかけ

 今回の説明会は、先に述べたように政府が声をかけた団体だけに限られ、公募もされなかったため、多くの団体は説明会の実施自体、知ることができませんでした。また説明された「意見聴取」も、「パブリックコメントとは異なる」と説明されました。

 私たちは参加団体として、先の要請文に基づき、「開かれた説明会の実施とパブリックコメントの実施」、および日本が参加して以降も開かれた説明会を実施することなどを説明会の現場でも直接、要請しましたが、一部「検討する」という発言はあったものの前向きとはいえないものも多くありました。このままでは、限られた団体だけが部分的に関与するという非常にいびつで非民主的な形で、日本がTPP交渉に参加していくことになります。

 結果的に、今回の説明会に参加し「開かれた説明会とパブリックコメント」の実施の必要性を、改めて感じた次第です。つきましては、先に提出した要請文(3日間で150団体もが賛同)を改めてより多くの団体に呼びかけ引き続き政府に要請したいと考えています。

 第一次集約は時間も限られていたため、残念ながらご賛同いただけなかった団体も数多くあります。ぜひ下記の第二次集約にご賛同いただけますよう、お願いいたします。

 

 


●第二次集約締切:62417:00

●第三次集約締切:73117:00

 ※7月のマレーシア会合終了後にその結果報告もかねた説明会を実施するよう引き続き要請する予定です。

 

●賛同提出先:事務局・NPO法人AMネット

  Eメール:amnetosaka@yahoo.co.jp

  電話:080ー3773ー2894

  ウェブ:http://am-net.org/

 

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【第二次集約】

内閣総理大臣       安倍 晋三 殿

経済再生担当大臣 甘利 明 殿

 

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉に関する

市民参加の説明会開催ならびにパブリック・コメント実施の要請

 

日本政府は、5月にペルー・リマで開催されたTPP協定・第17回交渉会合の概要報告において、7月にマレーシアで開催される次回交渉会合への参加が達成される旨、交渉参加11ヵ国が合意したと発表しました。今年2月に行なわれた日米首脳会談での交渉原則の合意、翌3月の安倍総理大臣による交渉参加の正式表明、そして5月のリマ会合での参加合意と、日本政府は前のめりの姿勢でTPP交渉への参加を急加速してきました。

TPP交渉の行方は日本社会のみならず世界各地に大きな影響を及ぼすことが各方面で指摘されています。市民一人ひとりが生活と未来に関わる事柄について交渉の適否を判断するためには、情報の公開と市民参加が不可欠です。

しかしながら、この間、政府による市民社会、自治体、関係団体に対する説明は行なわれず、意見の聴取も一切行なわれていません。国民不在、情報遮断のままでの決定は将来に禍根を残す結果を生みかねません。

私たち、日本社会を基盤に活動する市民活動団体・NPO・NGO、協同組合、関係団体は、このような状況に危惧の念を抱き、下記のように、TPP交渉に関する市民参加の説明会の開催とパブリック・コメントの実施を要請いたします。

 


 

1.TPP交渉に関する市民参加の説明会の開催について

TPPに関する市民と政府の意見交換会実行委員会の働きかけで、これまで東京、大阪、愛知において意見交換会が実施されましたが、昨年12月の安倍内閣発足以後一度も開催されていません。また地域シンポジウム、都道府県別説明会、業界団体との意見交換会も行われておらず、「国民的な議論」が尽くされたとはいい難い状況です。

今年3月の参加表明記者会見において、安倍総理大臣は「国民への情報提供はしっかり行ないたい」旨の発言をしています。この発言の趣旨が十分生かされるよう、市民に対する説明会を開催していただくよう、要請いたします。

 

2.TPP交渉に関するパブリック・コメントの実施について

TPPは秘密交渉であり、前もって交渉の論点を示すことは不利になると、日本政府は説明しています。しかしながら、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)は関係団体対象のパブリック・コメントの募集を行い、その意見を参考に交渉に臨む仕組みを整えています。

日本の市民・国民の将来に重大な影響を及ぼす交渉について、市民・国民の意見を聴取し、交渉に適切に反映するために、パブリック・コメントを実施していただくよう、要請いたします。

◎ 呼びかけ団体 ◎

 市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会(http://tpp-dialogue.blogspot.jp/)

NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)

NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)

NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)

TPPに反対する人々の運動

NPO法人名古屋NGOセンター

NPO法人AMネット

NPO法人関西NGO協議会

WOWJapan

 市民と政府のTPP意見交換会・北海道実行委員会

 市民と政府のTPP意見交換会・新潟実行委員会

市民と政府のTPP意見交換会・東京実行委員会

市民と政府のTPP意見交換会・愛知・岐阜実行委員会

市民と政府のTPP意見交換会・京都実行委員会

市民と政府のTPP意見交換会・大阪実行委員会

市民と政府のTPP意見交換会・神戸実行委員会

市民と政府のTPP意見交換会・鳥取実行委員会

市民と政府のTPP意見交換会・福岡実行委員会

 

  賛同団体 ◎ 
第一次集約154団体(非公表含む)
ご協力ありがとうございました。